ALS患者に夢を与えるロボット。開発のきっかけは3年半の引きこもり生活

テレ朝POST 2018/06/02

テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。

現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。

今回修造が訪れたのは、川崎市のとある公園。そこに居たのは、全身黒ずくめの男性と、白いロボットだ。修造が近づいて話しかけると、ロボットもすぐに「コンニチワ」と挨拶してくれた。

実は、この黒ずくめの男性はロボット研究者の吉藤健太朗さん。そしてロボットは、分身ロボットの「オリヒメ」といい、2020年に向けて新たな風を吹かせるかもしれないアイテムなのだ。

吉藤さんは、「これ(オリヒメ)はですね、私の友人で“高野さん”といいます」と紹介する。一体どういうことなのか?
ALS患者に夢を与えるロボット。開発のきっかけは3年半の引きこもり生活

ALS患者に新たな夢もたらすコミュニケーションツール

吉藤さんとともに「オリヒメ」を“操作”しているという人の家を訪ねると、そこにいたのはALS患者の高野元さんだった。

ALSとは、五感や記憶などの意識がはっきりとしたまま全身の筋力が奪われていく難病だ。手足を動かせない高野さんがどうやってオリヒメを操作しているのかというと、わずかに動く眼球の動きを使ってパソコンを操作している。これにより、オリヒメが高野さんに代わって言葉を発したりジェスチャーをしたりするのだ。

吉藤さんによれば、ALS患者の人は体が動かなくなって笑うこともできなくなってしまうと、「感情がないのではないか」などと外見から判断されてしまうことが多いという。そこで吉藤さんは、このオリヒメを開発するにあたっては「コミュニケーション」にこだわったそうだ。

たとえばオリヒメには、「なんでやねん」と発する特殊なボタンが付けられている。

吉藤さんはこのボタンの意図について、「“なんでやねん”ボタンは、コミュニケーションの基本。これは大事な話で、ALSの方がこういう機械を用いても、話が周りで盛り上がっているところに割り込んでいったりとか、なかなか出来ないんですよ。これってすごく辛いじゃないですか。周りの人たちがボケたときに、すかさず“なんでやねん”って言うと、そこがもうコミュニケーションの始まりになる」と語る。

これに高野さんも、オリヒメを通して「ツッコミは大事です」と共感を示していた。

「オリヒメ」で松岡修造のテニスを体験

「オリヒメを使えば、さらなる可能性も広がる」――そう言って移動したのは、テニスコート。テニスが趣味だったという高野さんが、オリヒメを使って修造のプレーを“体験する”というのだ。

すると、高野さんの友人が持つオリヒメは、修造のプレーに合わせて首が左右に動く。さらに、好プレーには手を叩くなど、その動きは会場で試合を観戦する高野さんそのものだ。

修造も、「高野さんと一緒に“テニスをした”という感覚になっています。ありがとうございます!」と興奮する。これに高野さんも、オリヒメを通して「5年ぶりのテニスコートです。夢のようです」と返した。

このように、分身ロボット「オリヒメ」は、高野さんの想いを伝えるだけの手段ではない。「オリヒメを使うようになって、外出したいと思うようになった」という高野さん。オリヒメは高野さんに新たな夢さえもたらしているのだ。
ALS患者に夢を与えるロボット。開発のきっかけは3年半の引きこもり生活

オリヒメ開発の原点は「引きこもり」

では、吉藤さんは一体なぜ、「オリヒメ」を開発しようと思ったのか。

その原点は、小学5年生から3年半に及んだ引きこもり生活にあるという。自分の居場所がどこにもなく、生きる理由も見失っていたなかで、孤独を埋めるための分身を作りたいと思ったことがきっかけだったそうだ。

そして、苦しかった引きこもり生活は、吉藤さんの中に新たな考え方をもたらした。

「なぜ身体は1個しかないのかって、ずっと思っていました。身体が1個しかないから、この身体が動かなくなったら心を運ぶことが出来ない。しかし、心は身体を越えて自由にオンライン世界などに籠ったりすることが出来るわけなので、“心を移動させるモビリティを作れるはずだ”というコンセプトで作ったのが、この分身ロボットのオリヒメだったりするんです」(吉藤さん)

自らの孤独感を埋めるために始めた研究。その思いからいつしか、感情を表現することが出来ない難病の人たちの孤独も埋めたいと思うようになっていったのだ。

吉藤さんは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「オリヒメはまだ日本にしかないので、全世界に知っていただく認知の場にしたい。“できない”と言われていたことを、テクノロジーで“できる”に変える」と力強く宣言してくれた。<制作:TOKYO応援宣言>

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