厚労省、「在宅医療の充実に向けた議論の整理」(案)を提示 「在宅医療の取組状況の見える化」 など6項目

M3.com レポート 2018年9月11日 (火)配信

橋本佳子(m3.com編集長)

 厚生労働省は9月10日の「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(座長:田中滋・埼玉県立大学理事長)に、「在宅医療の充実に向けた議論の整理」(案)を提示した。都道府県が取り組むべき事項として、「第7次医療計画の改善」「都道府県全体の体制整備」「在宅医療の取組状況の見える化(データ分析)」「在宅医療の提供体制の整備」「在宅医療に関する人材の確保・育成」「住民への普及・啓発」の6つを掲げた内容だ。幾つかの要望が出たが異論はなく、次回の会議で再度議論、その後に都道府県に周知する予定。
 「都道府県全体の体制整備」では、「本庁(厚労省)の医療施策部局と介護保険担当部局の連携の推進」や都道府県による市町村支援などを、「在宅医療の取組状況の見える化(データ分析)」では、市町村単位での在宅医療提供体制についてKDB(国保データベース)システムの活用などを、それぞれ盛り込んだ。「在宅医療の提供体制の整備」では、入退院支援ルールの策定・支援、後方支援病院等との連携ルールの策定、急変時の患者情報共有ルールの策定・運用を求めた。さらに「住民への普及・啓発」では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)等についての住民啓発により、住民側の機運が高まれば、医療従事者側への啓発につながるとも指摘している。
 2018年度から開始した第7次医療計画では、地域医療構想において推計した将来必要となる訪問診療の需要に対応するための整備目標や退院支援ルールのほか、「退院支援」「日常の療養支援」「急変時の対応」「看取り」の4つの医療機能の目標設定を定めることなどを求めている。厚労省の調査では、これらの策定状況には都道府県差が見られた(『8府県は未設定、医療計画「原則記載」の在宅目標』を参照)。第7次医療計画は、6年間の計画で、その3年目に中間見直しをする。「議論の整理」を今回取りまとめるのは、それを待たずに在宅医療の充実を進めるのが目的。
 次回会議で「在宅医療の充実に向けた議論の整理」を取りまとめた後、本ワーキンググループでは、(1)「議論の整理」に基づく都道府県の取り組み状況の確認、(2)第7次医療計画の中間見直しに向けた整理――などについて議論する予定になっている。

座長を務める田中滋氏
 KDBのデータ、使いやすい形に
 「議論の整理」(案)に対し、複数の意見が出たのが、KDBによる在宅医療の“見える化”について。全日本病院協会副会長の織田正道氏は、KDBのデータがあまり利用されていないとし、「もう少し使いやすくする方法はないのか」と質問。厚労省医政局地域医療計画課在宅医療推進室長の松岡輝昌氏は、「まだ(来年度の)予算要求の段階だが、できるだけ使いやすくなるよう、前向きに検討していく」と回答した。
 後述するように、岐阜県ではKDBのデータを用い、市町村別の在宅医療の現状を“見える化”したり、医療機関名も提示した市町村への情報提供を実施している。全国有床診療所連絡協議会常任理事の猿木和久氏は、「個別医療機関の名前を匿名化して使うことが前提だったのではないか」と質問。松岡氏は、「関係者間で協議する時に、具体名がないと話をしにくい」とし、外部に公表せず、内部資料として使う際には匿名化せずデータを使うこともあり得るとした。「どこまで共有できるかも考えつつ、できるだけ市町村が使いやすいデータになるかを検討していく」(松岡氏)。
 「在宅医療の提供体制の整備」の関係では、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦氏が、自院のある福井県では、後方支援病院との連携ルール等の策定は進んでいても、診療所開業医が高齢化している現状もあることから、診療所と連携して病院も積極的に在宅医療に出ていく必要性を指摘した。
 滋賀県健康医療福祉部理事の角野文彦氏は、「 “道具”を整えるだけでなく、次の段階での評価指標を考えることが必要」と述べ、訪問診療の整備目標や退院支援ルールなどを策定するだけでなく、「実際に何人の患者がそれに則って、サービスを受けたのか」などという実績評価の必要性を指摘した。

埼玉県、まず県と医師会が共同
 10日のワーキンググループでは、埼玉県と岐阜県の取り組みが紹介された。
 埼玉県は、在宅医療の充実を図るため、県が市町村を支援しながら、3つのステップで在宅医療・介護の連携を進めているのが特徴。多くの市町村には在宅医療を担当するセクションがなかったことから、「市町村から郡市医師会にアプローチするのが難しい」との声が上がり、県と医師会と調整し、医師会から市町村にまずアプローチする仕組みを作った。仕組み構築後に、市町村に移行している。連携推進に当たって、ICTを使い、多職種がいつでも患者の情報を共有できる仕組みも導入している。

岐阜県、KDBを使って“見える化”
 岐阜県の特徴は、さまざまな形で市町村支援をしていること。中でも、KDBを使った往診料や訪問診療料、看取り加算など、診療報酬の在宅関連の点数の算定状況を市町村ごとに整理したデータを提供していることが注目点だ。KDBを使った“見える化”に着手している都道府県は少ない。そのほか在宅医療・介護連携推進事業の取り組み、退院支援ルール策定などで、市町村支援に取り組んでいる。

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