「良い医療をしていれば、患者はやって来る」という⼤いなる誤解

かかりつけ医療機関を⽀援するという戦略(2)
キャリアブレインマネジメント 2018年05⽉08⽇

【株式会社メディサイト代表取締役 松村眞吾】

■地域の⼈は病院のことを認知していない
 前回は2018年度診療報酬改定で読み取るべき中⼩病院(200床未満)、中堅病院(200床以上400床未満)の役割と機能につて論じた。中⼩病院は診療所と共に、地域の「かかりつけ」医機能を、中堅病院は地域の「かかりつけ」医療機関を⽀援する役割が期待されると述べたが、今回は地域で⽣き残り、勝ち残る病院であるために何をすべきか考えたいと思う。
 いかに⼤きな建物で、⽴派な看板を掲げていたとしても、地域住⺠にとって病院とは、⾃分もしくは⾝内に何かあった時だけ必要とされる存在だ。⽇常的には関⼼の外にあり、病院関係者、特に経営者が思うほど地域では認知されていない。
 医療・介護・福祉関係者は、地域住⺠の間では、⾃分たちの存在感は⼤きいと思い込んでいるかもしれないが、それは錯覚にすぎない。地域資源として認知してもらおうと努⼒しなければ、何も始まらない。

■地域交流拠点の開設を機に地域の⽀持を得た病院
 ある地⽅の県庁所在地にある100床未満の療養型病院の事例を紹介する。昔は急性期も⼿掛けたが、近年は療養型医療に特化し、地域の⼈⼝減少などもあって、収益は右肩下がりで、⼈事労務の問題も、経営者を悩ませていた。知名度が低く、地域でも存在感を⽰せず、先⾏きが危ぶまれたことから、⽣き残りを懸けた闘いが始まった。
 まずは、在宅医療なども⼿掛け、地域医療機関として再⽣を図ることになり、経営者は在宅医療のバックアップ機能を果たすのにふさわしい地域包括ケア病棟をつくることにした。病床全体の4割を医療療養から地域包括ケア病棟に転換し、在宅医療も開始した。在宅医療を展開する形で、地域医療機関として再⽣を進めた。
 刮⽬すべきは次の展開だ。看護師寮の跡地を活⽤し、地域交流拠点を開設した。そこに地域連携室を置き、多職種の勉強会も開催した。ポイントは地域交流で、連携拠点としてのみ運⽤するなら⼤きな意味はなく、建設費の償却に耐えられる収⼊は⽣み出さないだろう。地域の医療機関として⽣きるためには地域の⽀持を得ねばならない。そのためにできることは何かを考えた結果だ。
 地元の⾷材を⽣かしたランチの提供、⼦ども⾷堂、各種体操教室、ヨガ教室、⼦育て教室に⾄るまで、さまざまな企画が⽴てられ、毎⽇のように教室やイベントを開いている。これらは病院の収益に直結はしない。何かの加算を算定し、増収につなげようとする医事的な発想からは懸け離れている。病院は地域に回帰する時代になったが、地域は、病院の存在をあまり認知していない。だから病院の存在を地域に知ってもらい、ファンを増やそうと続けているものである。
 ⼀連の試みの結果、地域住⺠らに⽀持され、地⽅紙などを中⼼にメディアにも取り上げられるようになり、知名度も上がった。もちろん在宅患者数は増えたが、何よりも紹介⼊院が増加したのは⼤きい。病床機能から⾒て、外来や救急で⼊院患者を増やすことは難しいので、紹介による⼊院患者増は、病院にとって最重要課題である。地域に⽀持されることで知名度が上がり、紹介⼊院が増えた。急がば回れではなく、地域で⽣き残るためには“王道”であったのかもしれない。
 また、⼈事労務⾯で思わぬ効果があった。医師や看護師を含めて⼈⼿に困らなくなったのだ。病院には「ここで働きたい」という各職種のリストがあるという。楽しい、⾯⽩い、やりがいがあるということらしい。地域住⺠にも、患者にも、働く職員にとっても好かれる病院に変⾝したのだ。

■地域づくりへの参加で、地域の医療ニーズを知ることも
 この事例から得られる知⾒は何だろうか。医療機能の充実と強化は⾔うまでもなく重要だし、それが前提になるが、地域に知ってもらう、地域と共にある、地域づくりに貢献するといったことが、地域に⽀持される病院づくりには必要であり、いわゆるブランディングにつながっていく。「良い医療をしていれば、患者はやって来る」というのは、⼤いなる誤解で、地域と双⽅向の、地域づくりに参加することで初めて、地域の⽀持が得られるだろう。地域づくりへの参加は、地域の医療ニーズを知る上でも重要ではないだろうか。
 ある病院は、関連のサービス付き⾼齢者向け住宅に、地域の⼦どもに向けた勉強部屋を開設した。閉ざされた存在ではなく、地域に開かれた病院であることが重要である。地域包括ケアシステム構築とは、地域づくり、まちづくりのことである。それを理解しつつ、具体策を考え、実⾏していくべきである。

松村眞吾(まつむら・しんご)
 1978年慶応⼤商学部卒業後、近鉄に⼊社。近鉄不動産で経営企画、⾼齢社会の街づくり、⾼齢者住宅関係の業務などに従事。2001年神⼾⼤⼤学院修了(MBA)、02年近鉄を退社、株式会社メディサイトを設⽴し、代表取締役に就任。05年勝川ファミリークリニック⽴ち上げに参加。⼤阪市⽴⼤⼤学院特任教授などを経て、4⽉より横浜市⽴⼤⼤学院国際マネジメント研究科特任教授に就任。
 著書に「後期⾼齢者医療制度を再考する」(編著)、「医療経営⽩書2008年度版」(共著)、「少⼦⾼齢時代の都市住宅学」(同)ほかがある。

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