中⼩病院サバイバル時代にすべきこと(3)悪化する採⽤環境で勝ち抜くためにすべきこと

キャリアブレインマネジメント 2018年10⽉11⽇

【株式会社ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス代表取締役 森清光】

■変⾰に強い院内環境をつくる
 前回の「中⼩病院サバイバル時代にすべきこと(2)」では、⾃院の状況を再度検証することについて書かせていただきました。それぞれ病院が抱える問題について再認識し、病院運営について再考する機会になれば幸いです。私に来る相談の多くは、既に顕著な問題が発⽣し、理事⻑や経営層の運営に関する認識が旧態的で⽢く、院内環境が凝り固まって容易に改善ができる環境ではない病院が多い傾向にあります。そのような病院は、私が⾒る限り、院内の雰囲気が悪く、設備への投資不⾜などが⽬⽴つので、患者の評判に影響します。特に中⼩病院は、患者が⼀定期間、⼊院滞在しており、外来中⼼のクリニックや公的病院に⽐べて厳しい評価を受けやすいことが特徴です。昨今の医療政策が頻繁に⼤きく舵を切っている現状も認識し、院⻑・事務⻑がリーダーシップを⽰して、変⾰に強い院内環境をつくりましょう。

■⼈事・労務管理は経営の最優先課題
 ⼀般的に病院コストの50%以上を占めているのは、⼈件費であり、多くの病院において、「⼈事・労務管理」は悩みの種です。昨今では、⼈材採⽤問題に加え、労働基準監督署による病院への⽴ち⼊り調査、是正勧告が相次いでおり、労務管理の緊迫度も増しています。そもそも、病院の⼈材不⾜は今に始まったことではありません。2011年の古い調査ですが、⼀般社団法⼈⽇本病院会が557病院に調査した内容では、医師は76.8%(428病院)、看護師は73.6%(410病院)が⾃院に不⾜していると回答しています。
 医師や看護師をはじめとする医療職不⾜は国ももちろん把握していて、さまざまな政策を⾏っていますが、改善は進んでいません。特に確保が難しい医師などは、全国的に取り合いになっている状況ですし、地⽅の病院によっては、採⽤のために東京都内に事務所やクリニックを設置していることさえあります。採⽤⽅法においても、ハローワークや勤務している職員の友⼈などから確保できているのならば素晴らしい状況ですが、現実は紹介会社に頼らざるを得ない場合が多く、私がお⼿伝いしている病院でも数千万円の⼈材紹介料を⽀払い、何とか補充しながら病院運営をしています。
 中⼩病院を取り巻く⼈材採⽤の環境はさらに悪く、クリニックと⽐較しても給料が同等レベルにも関わらず、夜勤があることや⽴地が悪いなどマイナス要素が多く、良い⼈材採⽤は難易度が⾼い上に、グループ企業に⽐べて⼈材調達コストが⼤きく経営を逼迫させます。⼀般的な紹介会社の紹介料率は20%以上で、低くても医師で300万円(年収1500万円)、看護師で80万円(年収400万円)です。医師も看護師も、不⾜すれば診療報酬に直結するので、緊急を要する場合、想定外の給料で雇わなければいけないこともあります。
 また、集団での離職は他⼈事ではありません。私もここ数年で、集団離職による緊急の⼈材採⽤相談を何度も受けています。

■医師・看護師が集団で辞める理由の多くは「⼈間関係」か「雇⽤環境」
 病院内での⼈間関係による問題を挙げれば切りがないですが、その中でもよくある問題は、医師・看護師⻑などからの不当なパワーハラスメントや、強引なシフト調整、問題⾏動を起こすような同僚をたった1⼈でも放置したことが、部署全体に波及することもあります。
 労働環境においては、⼈材不⾜から常態化している過剰な残業、シフトの融通が利かない、有給休暇が取れないような病院では退職者が相次ぎます。これらを理由に病院を辞める職員は、多額の紹介料を払って⽳埋めしたところで根本的な解決にはならず、中・⻑期の損害につながりますので、改善を図る必要があります。労働環境の基本的な改善の考え⽅は、厚⽣労働省の「医療従事者の勤務環境の改善について」の内容が参考になります。
 勤務環境改善マネジメントシステムの概要(厚労省資料)
 この資料の通り、良い⼈材管理は経営全体に波及していきます。厚労省が⽰す対策では、院⻑・事務⻑などの役職者が率先して問題の早期把握と改善をすることが必要だとしています。既に、院内が凝り固まっているような病院では、改善を⾏う環境を整えるだけでも⼤変な作業となります。しかし、定期的に改善を⾏える環境が整うと、院内の⾵通しが良くなるので、問題を早期発⾒できて、改善の第⼀歩になります。好循環している病院は、離職率も下がり、雇⽤経費が減るだけではなく、医療職にとっても評判が良くなり、良い⼈材が集まりやすい環境にもなります。
 具体的な⽅法についても、厚労省が詳細な⼿引き(医療分野の「雇⽤の質」向上のための勤務環境改善マネジメントシステム導⼊の⼿引き)を作っています。体制整備・現状把握・実施測定まで細かく作成されています。ぜひ活⽤してみてください。

森 清光(もり・きよみつ)
 駒澤短期⼤学放射線科卒業(診療放射線技師)、順天堂⼤附属順天堂医院勤務。その後、⽶国カリフォルニア州⽴アーバイン校に留学し、帰国後は⾄誠会第⼆病院、再度、順天堂⼤附属順天堂医院に復職。1991年ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス⼊社、2003年より現職。⽇本医学ジャーナリスト協会会員。

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