「ここに行けば正しい医療情報が得られる」サイト構築等の検討を―厚労省・上手な医療のかかり方広める懇談会

MesWatch 2018年10月5日

 患者・国民が「正しい医療の情報」を入手するためのサイトなどを構築することで、患者側も安心でき、不要・不急な医療機関受診などを減らし、医師の負担軽減が一定程度はかれるのではないか。ただし、「分かりやすく」「おしゃれなデザイン」であることが必要不可欠であり、国・医療機関・患者団体・マスメディアなどが協働していくことが求められる―。
 厚生労働省が10月5日に開催した「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(以下、懇談会)の初会合で、構成員からこういった意見が多数出されました。
10月5日に開催された、「第1回 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」
 
ここがポイント!
 1 「医師の働き方改革」と同時に、国民に「適切な医療のかかり方」を広めることが必要
 2 医療情報が氾濫する中で、「正しい情報」を入手できるサイト等の必要性高まる
 3 まず#8000、#7119のPRを充実してはどうか

「医師の働き方改革」と同時に、国民に「適切な医療のかかり方」を広めることが必要
 医師の過重労働を減らし、医療の質の維持・向上を図り、医療安全を確保するために「医師の働き方改革」が求められています。その際、患者側が「上手に医療機関にかかる」ことが同時に求められます(関連記事はこちら)。
 「医師の時間外労働の上限を●時間までとする」「医師の業務の一部を他職種に移管する」などの制度的手当を行っても、患者・国民側が「医療機関が空いているので、夜間に受診しよう」などと考えていたのでは、医師が過重労働からは解放されないからです。
 10月5日の懇談会では、こうした患者側の意識・行動変容をどう促していくか、と言う観点で自由討議が行われました。そこでは、「適切な医療情報提供」の必要性を指摘する声が数多くでています。

医療情報が氾濫する中で、「正しい情報」を入手できるサイト等の必要性高まる
 医療に関する情報はネット上にあふれるほどあります。しかし、実態は玉石混交で「何が正しい情報なのか」「どこに知りたい情報が掲載されているのか」が極めて分かりにくくなっています。佐藤尚之構成員(ツナグ代表取締役)は、「震災の折に行政からは非常に重要な情報が発信されたが、検索しにくく、かつ表現が難しすぎた。そこで、コピーライターにわかりやすく翻訳してもらい、『助け合いジャパン』のサイトに載せるなどした」旨の経験を紹介。
 また鈴木美穂構成員(マギーズ東京共同代表理事)も、「●●という疾病にはこういうタイプがあり、こういう治療法がある、などの情報を整理し、ワンストップで提供できるようなサイトが必要」と指摘。ただし、鈴木構成員は「おしゃれで、分かりやすい」サイトにしなければ国民側はアクセスしないとも述べています。
 さらに医療提供者の代表として参画する城守国斗構成員(日本医師会常任理事)も、こうした意見に賛同し、「ここに行けば正しい医療情報が入手できる」というサイトを、行政・医療機関・国民が協働して構築すべきとコメントしました。
 ところで、医療機関情報を網羅的に入手できるツールとして、各都道府県の「医療機能情報提供制度」(医療情報ネット)があり、ここの医療機関検索サイトでは、都道府県内の病院・診療所の詳細な情報(機能、設備、診療報酬の届け出状況など)を入手できます。まさに、構成員が提案する「正しい医療情報」サイトと言えるものです。しかし、当該サイトの認知度はあまりに低く、また厚労省や各都道府県のコーポレイトサイト(ホームページ)のトップページから当該サイトにたどり着くことは、そう容易ではありません。「情報の正しさ」「既存資源の活用」などを考えれば、「医療機能情報提供制度」(制度内の医療機関検索サイト)のリニューアルが現実的な選択肢となり、今後の予算確保などが期待されます。
 もっとも、佐藤構成員は「SNSのコアユーザーは900万人程度と推計され、実は1億人あまりの日本国民は、それほど活用していない。インターネットの検索サイトも、地方ではあまり活用されていないというデータもある。ネットを過信してはいけない」とも指摘。また吉田昌史構成員(宮崎県延岡市健康福祉部地域医療対策室総括主任)は、「高齢者の中にはネットを使いこなせない人も少なくない。世代に応じた情報提供方法を検討する必要がある」とコメントしており、適切な医療情報の提供に当たって、「ネット情報は医療情報を提供する1つのツールに過ぎない」点をきちんと認識しておくことが重要です。
 なお、いかに「おしゃれで」「わかりやすい」医療情報サイトを構築したとしても、その運用には多くの苦労が伴います。たしかに新サイト等の構築時には、関係者も熱心に参画します。しかし運用段階になると、その「熱」も冷め、一部の人のみが運用に携わりますが、限界もあり、「情報の更新などが疎かになる」→「利便性が下がる」→「利用者・閲覧者が減る」→「運用担当者のモチベーションが下がる」→「さらに情報更新が疎かになる」という負のスパイラルに陥りがちです。こうした点についても、事前に十分に検討しておくことが必要でしょう。
 さらに、いかに優れたサイトを構築・運用しても、「本当に見てほしい、知ってほしい無関心層」に情報を確実に届けることは非常に難しいのが実際です。こうした「情報提供の限界」も踏まえた議論が期待されます。

まず#8000、#7119のPRを充実してはどうか
 不要・不急の医療機関受診を適正化するために、国と各都道府県は「子ども医療電話相談事業(#8000)」と「救急相談センター(#7119)」を開設しています。例えば、夜間に子どもの具合が悪くなった際、「様子を見るべきか、医療機関を受診すべきか、救急車を要請すべきか」が一般人にはなかなか判断できず、「大事に至ってはいけない」と考え、救急搬送の要請等をしてしまいがちです。その際、まず#8000に電話することで、担当の小児科医・看護師から「どう対応すればよいか」の指示を得られるものです。
 この仕組みについても認知度が低く、デーモン閣下構成員(アーティスト)は「厚労省から聞いて初めて知った。まず、この素晴らしい仕組みのPR・周知を行うべきではないか」との考えを述べています。

デーモン閣下構成員は、「まず#8000、#7119のPRをすべき」と指摘
 なお、「医師の負担軽減のために、患者にも上手な医療機関へのかかり方を考えてもらう」となれば、一部の患者や国民は「受診抑制をするのか」と誤解しがちです。この点、根本匠厚生労働大臣は「決して受診抑制を目指すものではない」と強調していますが、豊田郁子構成員(患者・家族と医療をつなぐ特定非営利活動法人架け橋理事)は、「都市部で医師不足ではない地域で、『医師の負担が過重』と伝えても患者や国民には理解されにくい。丁寧に説明していくことが必要」と訴えました。豊田構成員は「高齢者等ではインターネットを十分に活用できない人も少なくない。医療機関の多職種による患者支援を充実する必要がある」とも指摘しています。
懇談会メンバーと根本匠厚生労働相(前列向かって右から3番目)
 懇談会では、月1回程度のペースで議論を深め、今年(2018年)12月頃に議論の経過などを「医師の働き方改革に関する検討会」に報告する予定です。その際、例えば都道府県の「医療機能情報制度における医療機関検索サイト」のリニューアル案などができていれば、そうした成果物を報告することなども考えられそうです。

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