超高額医薬品 迫る「第2波」 白血病薬1回5000万円 年内にも上陸

2018/9/29付 日本経済新聞

抗がん剤「オプジーボ」を上回る超高額医薬品の日本上陸が迫っている。米国で1回5200万円の値が付いた白血病治療薬の医薬品医療機器法(薬機法)承認審査(総合2面きょうのことば)をノバルティスが厚生労働省に申請、年内にも承認される見通しだ。「1回約1億円」の薬も登場しており、こうした第2波が保険適用されれば医療保険制度を揺さぶりかねない。

ノバルティスの新薬は米国名で「キムリア」。免疫細胞を活用して白血病を治療する効果の高いバイオ新薬だ。欧州でも8月末に承認され、4000万円以上の値が付くとみられている。

海外では超高額なバイオ新薬の承認が相次ぐ。リンパ腫治療薬の「イエスカルタ」は米国で37万3000ドル(4200万円)に設定、日本でも治験準備に入っているという。網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」は米国で両目で85万ドル(9600万円)の値がついた。

バイオテクノロジーで遺伝子を組み換えたり、細胞を増殖させたりするバイオ新薬は多くの病気の治療に新たな道をひらく。ただ従来の低分子医薬品に比べて製造工程は非常に複雑。開発や製造のコストは大きく膨れあがり高値になりがちだ。

日本では薬機法承認が出た新薬は原則として保険適用される。薬の保険償還価格である薬価は米欧などを参考に決めるのが今の仕組みで「海外とかけ離れた価格はつきにくい」(厚労省)。

医療費増に拍車

問題は超高額の薬価が医療保険に大きな影響を与えることだ。現役世代の薬代を含む医療費の自己負担はかかった医療費の3割。ただ患者負担に月額上限を定める高額療養費制度があり、医療費が高くなるほど保険で賄う部分が多くなる。

例えばキムリアの薬価が5千万円の場合、年収370万~770万円未満の人の自己負担は月に約60万円。残りの約4940万円は保険から給付される。

2015年末に肺がんへ保険適用が広がったオプジーボの当初価格は1回約130万円、1年間の投与で3500万円だった。健康保険組合などが「保険料の引き上げが避けられなくなる」と悲鳴を上げ、厚労省が17年に薬価を特例で下げた経緯がある。キムリアは多数回の投与は不要とされるが、1回当たり費用は約40倍に上る。こうした第2波を今の薬価制度でしのげるか不透明だ。

「高額薬の値決めの方法を考え直す必要がある」。東大の五十嵐中特任准教授は指摘する。政府は6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、新薬の保険適用について「費用対効果や財政影響などの経済性評価の活用などを検討する」と明記した。

これは薬の費用対効果が小さかったり、高額の薬価で保険財政を脅かしたりする場合には、保険適用を見送るか、薬価を一定の価格まで下げるべきだという考え方だ。

保険外の薬を使うと保険診療との併用を禁じた混合診療ルールに抵触し入院費なども全額患者負担となる。このため財務省などは、経済的な観点で保険適用しない薬を使う患者を混合診療の例外とするよう提案する。

海外では除外も

英国は最近、イエスカルタが「高価すぎる」と公的医療から外すことを決めた。同国では「健康寿命を1年延ばすのにいくら費用が増えるか」を基準に薬の費用対効果を調べ、2万~3万ポンド(290万~435万円)を超える薬は公的医療保険から外すなどしている。 ただ新薬への費用対効果導入を巡る厚労省の議論は停滞気味だ。命に値段をつけるような議論に抵抗感も強く、日本医師会は保険適用の可否に「費用対効果は用いるべきではない」との立場だ。

画期的新薬を含む医療の高度化は、高齢化と並んで医療費を膨らませる大きな要因だ。ただ安い薬価や保険適用の見送りは新薬の開発意欲をそぐ懸念があり、画期的な薬が日本に入ってこなくなる恐れもある。新薬を待つ患者の意向にどう応えるかという問題もある。

英国では国と企業が合意すれば薬の価格を割り引くなど患者に新薬を届ける工夫もしている。

新薬開発のインセンティブ確保、患者の希望、医療財政の維持――。日本はこの3つを満たす「解」を早急に探し出さなければならない。それには薬価制度だけでなく、医療のムダを省くなど社会保障全体を再設計する視点が要る。

(中島裕介)

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