副業禁⽌では介護施設に⼈材が集まらず、定着しない 快筆乱⿇!masaが読み解く介護の今(30)

キャリアブレインマネジメント 2018年08⽉31⽇

【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
 介護事業の経営における最⼤のリスクは、事業を⽀える⼈材がいなくなることだ。介護事業経営者がどれほど有能だとしても、収益を上げるための素晴らしい経営戦略を持っていたとしても、適切な⼈を確保し、必要な⼈材を定着させて事業運営していく⽅策や⾒込みがない限り、その経営者は常に経営危機にさらされているといっても過⾔ではない。
 では、どのようにして⼈材を確保し、定着させればいいのか―。1つの事業所で10年以上勤続する介護福祉⼠に⽉額平均8万円程度の賃上げを⾏う「政府パッケージ」が、2019年10⽉以降実施された場合、それは介護⼈材の確保策として⼀定の効果が出るだろう。
 しかし、その施策は運⽤⾯で不透明な部分が残されており、確実にどうなるかを現時点で予測することは不可能だ。そして、仮にその⽅策が実現したとしても、それだけで介護労働者の数が劇的に増加するとは考えられず、介護事業者が抱える⼈員不⾜の問題が解決することにはならない。
それほど、⽇本の⽣産年齢⼈⼝の減少は深刻で、さらに夜勤を伴う⾁体労働に対応できる体⼒のある⼈材が、ますます少なくなっていくのは確実だ。

■⼈材確保には発想の転換が必要
 そのため、外国⼈労働者を増やす⼀連の法律改正が⾏われているが、これもあまり効果は期待できない。それらの⼈材は⼀時的に労働⼒になったとしても、⻑いスパンで定着するケースが限られるからだ。
 外国⼈労働者は、優秀であるほど仕事を早く覚え、ある程度の収⼊を得ると⺟国へ戻る傾向にある。このことは、過去のEPA(経済連携協定)による外国⼈労働者の受け⼊れで既に証明されている。従って、国の施策だけに頼って介護⼈材を確保していくのは⾄難の業だ。
 むしろ、今後は全ての事業者が介護⼈材不⾜を解消できると期待してはいけない。⼈材枯渇の厳しい状況であることを認識した上で、他の事業所との差別化を図り、⼈が集まってくる事業所になろうとするための発想の転換が必要となる。
 例えば、介護職員処遇改善加算で⼀番⾼い単位加算を得るために必須とされるキャリアパスは、⼈が集まってくる⽅策となっているだろうか。
 キャリアパスとは、ある職位や職務に就くために必要な業務経験とその順序のことを指すが、この仕組みがあるからといって、⼈材が育って定着するとは限らない。⼈によっては、職場内で⼀定以上の地位に就いて給与が上がるとしても、その責任の重さを考えると、そのような地位に就きたくないと考える場合もある。
 このような⼈たちにとっては、職場内でより⾼い職位や職務に就くことは何の意味もなく、働き続ける動機付けにならない。そのため、事業者には職場を超えたキャリアパスの仕組みをつくるという発想が必要となる。今までとは違った全く新しい働き⽅の仕組みがあればどうだろう。

■指導からコーチングまで可能なリーダーの育成を
 職場で重要なのは、チームのメンバーを引っ張ってプレーするリーダーだ。このようなリーダーがいない職場には⼈が定着せず、事業の継続が困難となるため、事業者や管理職はこうしたリーダーを育てようとしているはずだ。その時、管理職らには、ティーチング(指導する)からコーチング(相⼿に考えさせる・気付かせる)まで可能なリーダーを育てるという視点が重要になる。
 そして、コーチングできるリーダーについては、職場内にとどまらず、職場の外に向けたコーチングができる可能性があることにも着⽬すべきだ。
 つまり、そのような⼈材は、職場外の同じ職種の⼈に向けた講師役が務まるのだ。そうした⼈材がいるのなら、その⼈を職場の中だけで抱え込まず、職場外で積極的に活躍できる場所を与えることを検討する必要がある。
 リーダーのスキルがある⼈材は職場での業務だけでなく、職場外で講師役も務められるということが、その⼈が同じ職場で働き続けるモチベーションに昇華できるという発想があってもいい。それがチームリーダーになる動機付けにもなるからだ。
 なぜなら、職場で⾼い地位に就いて重い責任を負わされるよりも、職場で得たスキルを⽣かし、その能⼒に基づいた⼈材育成に携わりたいと考える⼈は、予想以上に多いと思われるからだ。
 職場でリーダーになれる⼈は外部講師もできる可能性があることをアナウンスし、実際にそうなった時には、講師として活躍してもらえるように応援すべきだ。
 また、その講師業に関しては、職場の業務の⼀環として派遣するのではなく、職場の勤務時間とは別に、個⼈の仕事として講師役を務め、講師料が個⼈の収⼊となるようにすることも重要だ。
 つまり、本業に就きながら、個⼈事業主として講師業を⾏うことができることを積極的に認める職場改⾰があってもいいのだ。「アルバイトは禁⽌」という就業規則の規定で従業員を1つの職場に縛り続けるのでは、⼈は集まらず、定着しない。副業を禁⽌する就業規則などは、「時代遅れの規則だ」と否定されるべきだ。

■「モデル就業規則」の⾒直しで副業が解禁に
 国も副業を推し進める改⾰に着⼿している。厚⽣労働省は17年11⽉、企業が就業規則を制定する際のひな型となる「モデル就業規則」について、副業を認める内容に改正する案を有識者検討会に提⽰した。現在は原則禁⽌としている副業について、事前に届け出を⾏うことを前提にそれが可能と明記した。⾃社の就業規則にモデル就業規則を転⽤する中⼩企業も多く、⼀定の普及効果が⾒込まれている。
 具体的な⾒直しとしては、現在のモデル就業規則にある「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を削除した上で、「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」との規定を新設。政府が3⽉にまとめた「働き⽅改⾰実⾏計画」でも、副業・兼業の推進を掲げており、今回のモデル就業規則の改正もこの流れの中にある。

■個⼈事業主として⾏う副業を推奨
 従業員の副業を認めた場合、⻑時間労働や労務管理はどうなるのかという問題がある。これに関して、私が推奨する副業・兼業とは、本業を持つ⼈が本業に⽀障が出ない範囲で個⼈事業主として副業を⾏うというものだ。
 本業、副業とも雇⽤されている場合、合算して労務管理し、後で雇⽤契約を結んだ⽅が労務管理を⾏うことになるが、副業部分が個⼈事業主であれば、管理職と同様で労働基準法の対象外となる。⾃分の働きたい範囲で、働くことができる時間だけ、⾃分の判断で副業を⾏い、確定申告を⾏うだけでいい。もちろん、そのような副業が可能となるには、顧客のニーズにマッチした能⼒が必要であることはいうまでもない。
 例えば、介護職員の中には本業のために特別な資格や能⼒を取得しようと努⼒している⼈も多い。アロマセラピーや、⾼齢者の健康維持・⾝体機能維持のためのヨガの指導をできる⼈もいる。セラピストの中には、⾃⽴⽀援のための独⾃の運動や⾼齢者⽀援⽅法を⽣み出した⼈もいる。
 それらの⼈は、本業の業務の中で利⽤者⽀援の⼀環として、そのような活動を⾏っているが、そうした⽀援活動を求める⼈は事業所内にとどまるとは限らない。そうであれば、持っている資格や能⼒を⽣かした活動を、本業の利⽤者に対してだけではなく、広く地域住⺠に⾏ってもいいだろう。コーチングができる介護リーダーは、外部講師ができることから、各地で開催される介護研修などの講師役を積極的に務めればいい。

■副業によって本業の質向上につながる可能性も
 その研修などで、「参加料」「指導料」「講師料」という形で報酬を得ることは全く構わない。当然、その活動は公休の⽇や、勤務時間外に⾏ってもらうことになる。また、そうした副業によって、本業に⽀障を来すことがあってはならないという前提条件は、守ってもらう必要がある。
 しかし、それらのことさえ守れば、副業は⾃由であるし、むしろ積極的にその活動を応援してもいい。例えば、その活動のために介護施設の地域交流スペースを無料で貸し出しても問題はないだろう。本業の職場全体で、そうした⼈に場所と機会を与えるという便宜を図ることは推奨されていい。
特殊な技能や能⼒を持つ⼈、コーチングができる現場のリーダーが、このように職場を超えた活動が可能になり、その活動によっていくらかの報酬を得られるとしたら、そのような能⼒を⾝に付けようという動機付けになるほか、本業でのサービスの質向上にもつながるだろう。
 同時に、そうしたスキルがあることを⼤事にしてくれる職場で働きたいという動機付けにもなり、そのような職場で働き続けたいという思いにもつながる可能性が⾼い。
 いずれにしても、「副業禁⽌」などという時代遅れの規制にとらわれて、柔軟な発想ができない経営⽅針では、他の事業者と差別化を図って⼈材を確保し続けることが不可能なのは明らかだ。

菊地雅洋(きくち・まさひろ)
 1960年、北海道下川町⽣まれ。北星学園⼤学⽂学部社会福祉学科を卒業し、社会福祉⼠、介護⽀援専⾨員など多数の資格を保有。北海道介護福祉道場 あかい花代表を務める。介護業界屈指の論客としても知られ、⾃⾝が管理するBBS「介護福祉情報掲⽰板」(表板)、ブログ「masaの介護福祉情報裏板」などを通じて現場からの情報発信を続けている。主な著書に「介護の詩(うた)〜明⽇へつなぐ⾔葉」、「⼈を語らずして介護を語るな THE FINAL〜誰かの⾚い花になるために」(いずれもヒューマン・ヘルス・システム社)、「介護の誇り」(⽇総研出版)

「ポチッ」して頂けると励みになります♡

仲間募集中

業務拡大につき、看護師、理学療法士、作業療法士、事務職+保育士・歯科衛生士・栄養士・管理栄養士さんを募集中。
週1回1時間から働ける柔軟で明るい職場で、子育てママや社会人学生も在籍。
すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。

コメントを残す