子ども医療費助成 どこまで(上)負担減競争エスカレート、20歳過ぎても無償

日経新聞 2018年7月17日 全国の自治体が子どもの医療費への助成を競い合っている。2018年4月時点で高校生まで助成する自治体は全体の3割を超えた。5年前の3倍以上の水準だ。住民を呼び込む手段として窓口負担の無料化や助成対象年齢の引き上げが広がる。子育て世代の評価は高い一方、安易な助成は医療費の膨張に拍車をかける恐れをはらむ。

奈良県の山間部に「孫と暮らせるふるさと」を訴える標語が目立つ
「大学生で収入がないので、医療費がほとんどかからないのはありがたい」。20歳まで1千円を超える医療費を補助する奈良県山添村の役場には、住民から感謝の声が届く。山間部の過疎地。職員は「不便な場所だからこそ、安心して子育てしてほしい」と話す。
相模原市は10月、今は小学生までとしている助成対象を中学生まで引き上げる。隣接する東京都町田市や神奈川県大和市の助成対象は中学生まで。住民獲得へ近隣との競争が広がる。
子どもの医療費の窓口負担は原則、未就学児が2割、小学生以上は3割だ。負担を軽減するため何歳まで助成対象にするか、いくらまで補助するかという制度設計は自治体に委ねられている。
日本経済新聞社の調査では、18年4月時点で中学生まで助成する自治体は6割近くにのぼる。いまでは中学生以上が「全国標準」だ。確認できる厚生労働省の調査で最も古い09年時点では中学生まで助成していた自治体は2割未満だった。一つの自治体が助成を拡充すると、ドミノ式に周辺に波及する傾向にある。
高校生まで助成対象にする先陣を切ったのは東京都千代田区。11年度から実施した。「子育ては0歳から高校卒業まで」と掲げ、児童手当も高校生まで独自に支給する。同区の財政上の蓄えである基金は1千億円を超える。18歳以下人口は約16%で「財政を圧迫するほどの規模ではない」と区の担当者はいう。
ところが追随する自治体は事情が異なる。例えば埼玉県内で高校生まで助成する14市町村をみると、9つは人口が5万人以下と規模が小さい。
全国で最も助成年齢が高いのは北海道南富良野町だ。22歳まで無償だ。もっとも、若い世代の流入を期待したのに、実際は10年前に比べ未成年者が100人近く減った。町の担当者は「財政は苦しいが、制度として浸透している」という。いったん広げた制度を縮小するのは難しい。
子ども医療費の助成が自治体で始まったのは1960年代。診療を受けられない乳幼児の命を守るためだった。人口が減少に転じたいまでは、副作用も懸念される。
厚労省の検討会で示された試算では、全国で高校卒業まで無料化すると、自治体の助成がまったくない場合に比べて医療保険の給付費は年8400億円増えるという。さらに医療機関窓口でいったん払った分を後から払い戻すのではなく、はじめから払う必要のない方式を採ると、医療費の伸びは一段と加速する。
子ども医療費の窓口負担分を自治体が助成で肩代わりしても、残りの7~8割は税金や企業の健康保険組合などの保険料で賄う。安易な無償化は自治体の財政負担にとどまらず、医療費全体を押し上げる。子育てしやすい環境を長く保つためにも、定額負担や所得制限の導入など、制度全体に自制を効かせるときを迎えているのではないか。

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