第516回 介護・老人福祉の倒産件数、上半期の最多記録を更新!訪問・通所ばかりが潰れる理由とは?

みんなの介護ニュース 2018/07/17 15:00

東京商工リサーチが老人福祉・介護事業の倒産件数を公表

倒産件数、上半期での最多記録を更新

近年、日本人の平均寿命は延伸しています。厚生労働省は、9日に開いた有識者会議で、2016年の健康寿命が男性72.14歳、女性74.79歳とそれぞれ過去最長になったことを発表しました。3年前の前回から、男性は0.95年、女性は0.58年も伸びているのです。今後も平均寿命は延伸し、それによって高齢者率も増加。2025年には約30%、2060年には約40%に達するとみられています。

高齢者が増加して介護施設の需要が上昇している昨今ですが、一方で、介護事業所の倒産が年々増加傾向にあるというのです。

老人福祉・介護事業の倒産(年次推移)

出典:東京商工リサーチ 更新

東京商工リサーチによると、2018年上半期(1~6月)の「老人福祉・介護事業」の倒産は、45件となり、上半期での最多記録を更新しました。過当競争が続く中、小規模事業者を中心に経営状況の厳しさが浮き彫りとなっています。倒産した介護事業所の特徴として、従業員5人未満が全体の約6割(構成比57.7%)であることや、設立5年以内が28.8%であることから、小規模で設立してから間もない事業者が、倒産件数を押し上げていることがわかります。

訪問介護と通所・短期入所の倒産件数が多い理由

倒産した老人福祉・介護事業(業種別)

出典:東京商工リサーチ 更新

倒産した介護施設を業種別でみてみると、「訪問介護」と「通所・ 短期入所」がそれぞれ18件となっており、合わせると全体の8割を占めていました。なぜ、この2つが多いのかについて、述べていきたいと思います。

元手があまりかからないことによる競合の乱立

訪問介護事業の倒産が多い理由の一つとして、2015年度の介護報酬改定にあるでしょう。全体の平均改定率は2.27%マイナスでしたが、訪問介護の場合は、生活援助、身体介護とも大幅に引き下げられたのです。身体介護では「20分未満」がマイナス3.6%、「20分~30分未満」と「30分~1時間未満」がマイナス4.0%、生活援助では「20分~45分未満」でマイナス4.2%、「45分以上」ではマイナス4.7%となりました。こうした介護報酬の引き下げは、経営して間もない小規模事業者にとっては致命傷となり、倒産や撤退を招く大きな要因となったとしています。

また、訪問介護は施設と違って元手があまりかからないことから、独立のハードルが低いことが挙げられます。訪問介護事業は小規模が多く、独立しない限りキャリア・給与のアップは望みにくい環境にあります。待遇の改善を望んだ介護事業者が独立をし、その中でまた独立を…というように、小規模の訪問介護の事業所が乱立したことで、競合が激しくなり、経営知識のない事業者が淘汰されていったからなのでしょう。

通所・短期入所は最初の集客がつらい…

次に、通所・短期の倒産が多い理由として、利用者が集まらないというところにあります。大手であれば、利用者数は安定していて、ケアマネジャーの紹介で利用者を確保しやすいでしょう。しかし、新規は集客がしづらく、実績もないのでケアマネジャーも利用者に勧めづらいのです。

また、スタッフがうまく集まらないというのもあります。今も述べた通り、新規はとても集客がしづらい状態です。そうなると、雇うスタッフの数も少なくしなければなりませんから、1人の負担が重くなりますし、利用者が増えてきたら再度広告を打たなければなりません。

現在、介護職の有効求人倍率は3.02倍と、どこも人手不足の状態です。そうなると、必然的に労働条件の良い事業所が人材を得ることになり、そういった福利厚生の揃った事業所は大手事業所が多い傾向にあります。よって、開設したてでは、人材を得ることが難しいと言えるでしょう。

介護報酬が改定されても、経営の雲行きは怪しい…

訪問・通所が総合事業へ移行

2017年4月より、訪問・通所介護が「総合事業」へと移行しました。これまでと違う点は、自治体で行う事業のため、住んでいる場所ごとにサービスの内容が違うという点。また、軽度者(要支援や要介護1・2)だけでなく、非該当とされた方や、要介護認定を受けていない人でも、65歳以上であり、生活機能に異常があると判断された場合は利用することができる点があります。

介護給付費用の推移

出典:厚生労働省 更新

この総合事業の背景にあるのは、介護の人材不足と介護費用増加の対策です。すでに説明した通り、日本は超高齢社会に突入しており、介護の人材を必要としています。しかし介護職は薄給であり重労働なので、人材の需要に対して供給が追いついていないという実態があるのです。また、厚生労働省の資料によると、2017年度の介護保険の総額は10.8兆円と増加し続けており、今後もこの傾向は続くと言われています。

これらの問題ですが、総合事業に移行すると、どのように解決するのでしょうか?まず、人手不足の問題に対してですが、この総合事業は、地域住民による「助け合い」の精神で、高齢者の介護予防に務める体制づくりを目指していて、ボランティアや住民主体団体の協力を重視しています。これにより、介護人材の人手不足を補おうというわけです。

また、総合事業は介護予防、重度化防止が主な目的ですので、それが達成すれば、要介護状態となる高齢者が減少し、結果として介護費用を抑えることになります。さらに、介護保険制度の財源から総合事業に支給される介護給付の総額には上限が定められているので、それを超えた場合は、保険者である自治体の全額負担となる、という点も挙げられるでしょう。

総合事業化したことで、軽度者を対象とした事業所が閉鎖?

ところがこの総合事業、事業者からは大変不評のようです。2018年1月28日の東京新聞朝刊によると、市区町村が手掛ける軽度者向け介護サービスが、約100の自治体で運営難に陥っているとのこと。地元介護事業所のスタッフ不足に加え、これまで請け負ってきた大手の撤退が追い打ちをかけ、訪問介護の回数が減るなどの影響が出ているのです。

大手の事業者が撤退した理由として、軽度者へ向けたサービスの介護報酬が、2018年の改定によって減少したことが挙げられます。現在、総合事業では、現行の訪問介護と通所介護を「訪問型サービス」「通所型サービス」に名称変更し、それぞれ幾つかの異なるサービスに色分けしています。

現行を基準緩和したA型(生活援助中心)、住民主体で運営するB型、短期集中のC型です。このこの中のA型ですが、資格要件が緩和された代わりに、介護報酬が減少しているため、事業所サイドからすれば、満足な利益を得ることが困難となりました。

利用者や国からすれば、介護報酬が下がれば介護費用の負担も軽くなるので望ましいことかもしれませんが、そのサービスを提供する事業者からすれば収入が減少することと等しいので、そのサービスに力を入れる優先順位は少ないわけです。

「人手不足であること」と、「生活援助の介護報酬が少ないこと」。この2つの条件で最大限の利益を得るには、介護報酬の多い重介護度を対象としたサービスに力を入れるのは当たり前の話です。このままでは、総合事業における軽度者向けサービスを専門に扱う事業者は、ますます減少していくでしょう。

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