発達障害の私が会社生活で苦しんだ10のこと 新卒で入った大企業は結局4カ月で辞めた

東洋経済オンライン 2018/07/15

安田 祐輔 : キズキ共育塾代表

小・中学生の6.5%が発達障害の可能性――。これは2012年に文部科学省が発表したデータである。

実はこの「発達障害」という言葉、2004年に発達障害者支援法が施行されるまで、あまり知られていなかった概念である。

理解されない「大人の発達障害」

「幼少期の発達」については、親にとって心配なことがあれば、3歳児健診などで公的機関に相談できたり、必要であれば療育を受けることができたりと、支援は広がっている。しかし、「大人の発達障害」についての理解は、社会に十分に広まっているとは言いがたい。

実は私自身も、子ども時代から大人になるまで、発達障害やうつ、ひきこもりなど、さまざまな障害やトラブルを経験した。現在その経験を活かし、発達障害・不登校・ひきこもりなどの若者を支援する進学塾「キズキ共育塾」などの事業を行っている。

発達障害を抱えていても、社会の中で自分を活かす場所を見つけるまでの体験は拙著『暗闇でも走る』に記したが、ここでは私が大企業を4カ月で休職した当時の心境を振り返り、発達障害傾向のある人材を活かす方法や、面接でのミスマッチを防ぐ方法を伝える。

たとえば、子どものころ「空気が読めない」「過集中」など発達障害傾向があり、いじめなどに遭ったとしても、やがて大学生や専門学校生になり時間の使い方や人間関係が自由に選べるようになると、その傾向も目立たなくなってくる。

しかし、そんな若者も、社会に出て就職すると、職場で「不適応」を示す事例が増えていく。

企業側も、発達障害傾向にありがちなユニークな学生をいざ採用してみると、配属先が合わず休職したり、早期退職するといったケースが増えていると聞く。

しかし、そんな社員を、マイナスイメージでとらえてはならない。実は、配属先や仕事内容が発達特性に合えば、驚くほど生産性を上げる可能性があるからだ。

反対に、特性を見誤って本人に合わない部署に配属すれば、社員も企業も不幸な結果に終わる。そんな今、企業側にも「大人の発達障害」に関する理解が急速に求められている。

実は、私自身が「発達障害」だと知ったのは、30代になってからだ。これを聞いたとき「私が4カ月で仕事を辞めたのは、発達障害だったからだ」とあらゆる疑問が氷解した。

私は10年前、ICU(国際基督教大学)在学中、リーマンショック直前に就職活動を行い、運良く大企業に滑り込んだ。「これで安定した人生が待っている」と思っていた。

けれども、普通の人が当たり前にできることができず(たとえば毎日、満員電車に乗る、ほか多数)、うつ病発症、4カ月で会社を休職。その後退職をして1年間ひきこもり、ベッドから起き上がれない生活が続いた。

発達障害の私が、企業生活の中で苦しんだことの例を一部挙げる。もし皆さん、または皆さんの上司や部下で下記のような特徴があったら、将来的に私と同じような苦しみを抱えてしまうかもしれない。

  1. 空気が読めない(つい上司に反発しすぎたり、部下を詰めたりしてしまう)
  2. 会社の飲み会のほか、休日の社内イベントは参加しない
  3. 雑談が苦痛
  4. 音に過敏
  5. 耳栓をしないと集中できない(新人は電話に出なければいけないのに)
  6. 革靴を履くことがつらい(感覚過敏)
  7. 少しずつ約束を違える(納期や締め切りも必ず少し遅れてしまう)
  8. いつも待ち合わせ時間に5分ほど遅れる
  9. 15分残業すれば明日の納期に間に合うのに、定時で帰る
  10. やりたいことは追求するが、興味のないことになると途端にパフォーマンスが落ちる

など。もし思い当たる節があり、会社になじめず深刻に悩んでいる人は一度、専門機関で診てもらう手もある。

自分の特性を把握し企業側へ伝えることで、配属先のミスマッチを予防することができるかもしれない。

これらの特徴は、一昔前なら、「甘えるな!」「働くことを舐めているのか」と言われてしまうような話である。けれども私はまじめに悩んでいた。なぜ普通に人には当たり前にできることが自分にはできないのか、よくわからなかった。発達障害と診断されるまでは……。

発達障害の私が起業家になり成功した理由

そんな私だが、会社を辞めた後の私は、1年のひきこもりの末、うつ病からはい上がって起業し、事業をなんとか成功させることができた。

私自身は発達障害の特徴である「集中すると物事がまったく聞こえなくなるほどの過集中」「白黒はっきりつけないと気が済まない」といった特徴が、起業家として活きたのだと思う。

発達障害の若者は決して「使えない」のではなく、「使い方が難しい」だけなのだと証明できた気がしている。

もし、部下が発達障害にみられる特徴があり職場になじめず、辞めそうな気配を感じたとき、上司は何をしたらいいのか。

私の場合、一言追記しておきたいのは、職場になじめない、浮いた存在の私を見て、上司たちはとてもやさしく声をかけてくれた。けれども、時にそれが逆効果になることもあった。

たとえば、「飲みに行こう」という声がけ。この「飲みに行こう」が一部の発達障害の当事者にとっては、悩みを生む。発達障害傾向のある若者のうちかなりの割合の人が、雑談が苦手だからだ。

会議のように「ゴール」のある場においては積極的に発言できるが、ふわっとした飲み会では何を話していいのかわからない。

自分が空気を読めないことを自覚しているほど、何を話せば失礼ではないのか悩んで、何も発言できなくなる(だから私は非常に人見知りであり、一方、一度仲良くなった人とは飲みに行くのが好きである……)。

そもそも私の場合、発達障害のせいか聴覚での情報処理が得意ではないため、飲み会の会場がうるさいと、目の前の人の話に集中できず、ますます会話の流れが読みづらくなり、発言できなくなる。

仕事がうまくいかない若者を見ると、上の世代はつい「飲みに行こうか」と誘いがちだが、「飲みに行く」ことを喜ぶか喜ばないかも部下次第であることは留意しておきたい(仲良くなれば、話は別だが)。

最近はスタートアップなどを中心に「1 on 1」がはやってきているが、業務時間中に1対1できちんとテーマを決めて話すほうが、良いことも多い。

発達障害の私がなぜ採用面接ではうまくいったか?

ここで注意しておきたいことは、そんな私でも採用面接はどうにかなったということだ。特に新卒採用では、面接で聞かれることはパターン化されている。

「あなたが学生時代に頑張ったことは」
「弊社を志望する動機は」
「これまでの人生で壁にぶつかった時のことを話してください」

聞かれることなど、どこの企業も似通っている。

昔から空気を読んで発言することが苦手だった私は、「コミュニケーションをパターン化」して理解することに慣れていた(幼少期からいじめられないように、努力した結果だ)。

採用面接初期のころ、某外資系金融機関では、空気が読めず何を発言したらいいのかわからずさんざんな結果に終わった。

しかし、その後インターネットで「よくある質問パターン」を洗い出し、その回答を作って暗記するまで読み込んだところ、ほとんどの会社で最終面接までは到達した。実際、外資コンサル・総合商社・マスコミなどから1社ずつ内定をもらうことができた。

私を含め、いわゆる高学歴のASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群:人とのコミュニケーションやかかわりに難しさが生じる、興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特のこだわり、行動、振る舞いが見られることもある)は「パターン認知」の能力が高いことが多い。

発達障害のある人は、空気が読めずに苦労した分、コミュニケーションをパターンで覚えていることが多いから、採用面接はなんとかなってしまう人もいる。

そして近年はますます、企業側も「尖った人材」を求めるようになってきた。変わった雰囲気を持つ若者を、積極的に採用しようとする企業が増えてきている気がする。

「発達障害の傾向を持つ若者が採用されやすくなっている」と言えるかもしれない。

「尖った人材」はこうして活かす

私は起業において一定程度の成功ができたのだが、発達障害の当事者が持つ、「過集中」「こだわりの強さ」といった特徴は、仕事のさまざまな局面において意味を持ってくる。

一方で、会社がそのような人材を使いこなすことができるのかについては、「その会社による」としか言いようがない。使いこなすことができず、「お互いが不幸」にならないためにはどうしたらいいのか。

そのためには、自社に何が許容できて、何を許容できないのか、「行動規範」などを通じて、明文化しておく必要があるだろう。

『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

弊社の社員にも、私以外に発達障害の者がいるが、たとえばASDゆえの「白黒つくまで考え抜く」といった姿勢のおかげで非常に助かっている。私見ではあるが、優秀な人に発達障害傾向を持つ人はかなりいる。

ただそのような社員が活躍できる理由は、「その人に合ったポジションがある」からだ(そして弊社は、ポジションごとに採用を行っている)。

弊社は基本的に私服。私のように感覚過敏があっても働ける。全社的な飲み会はほとんどない。「人とのコミュニケーションに疲れるから夜はゆっくりしたい」タイプの者も働きやすい会社にしたいから。私のように発達障害傾向のある方にとっても働き心地の良い社風を創りたい、と思っている。

採用する企業は、「自社に合った人材とは何か、自社に合わない人材とは何か」。そして、学生は「自分に合うポジション、合わないポジションとは何か」を、明確に定義したうえで採用や配属、就活を行うことで、一人ひとりが生き生きと働くことができる。

それは、発達障害のあるなしにかかわらず重要なことかもしれない。

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