【長崎】地域ぐるみで介護予防 長崎佐々町、保険料抑制につなげる

長崎新聞 2018/6/25

「生きがい教室」で、椅子に座って軽運動に取り組む高齢者=佐々町総合福祉センター
 高齢化の進行で県内市町でも介護保険料が上昇傾向にある中、かつて保険料や要介護認定率が県内最高水準にあった長崎県北松佐々町は、4月の改定で保険料を前期比5・7%減の5726円に抑えた。保険料が下がった県内4市町で減少率は最大。保険料は一般的に介護保険サービスの利用が少ないと下がる。給付費や認定率の抑制はサービス低下の懸念もあるが、同町はできる限り介護を受けなくていいように高齢者の体力、健康維持を図る介護予防にいち早く力を入れ、地域ぐるみで結果につなげた。

■長く元気で
 6月中旬、同町総合福祉センターであった「生きがい教室」。高齢者約20人が参加。午前に集団で運動や体操に取り組み、午後は会話や趣味に興じた。町内で重点的な介護予防が必要な高齢者らを対象に、町地域包括支援センターが週2回開いている。
 川口康雄さん(84)は2009年に脳梗塞を患い、一時介護保険のサービスを利用したが、その後回復。12年から同教室に通い、要介護認定は受けていない。「町がいうように、介護(認定)を受けんでいいようにと思って来よる」
 この日、午前の運動を指導した宮島初枝さん(77)は、町内で箏(こと)の教室を開く傍ら、4年前に高齢者向けの健康体操「スクエアステップ」の指導資格を取得。ボランティアで町内の指導に当たっている。「町内の高齢者が長く元気でいられたら、どんなにいいだろうと思って。保険料が安くなれば助かるし」と笑った。
 生きがい教室は10年度、未認定を対象に、地域住民と触れ合いながら介護予防を目指す通所型サービスとして開始。現在は要支援1、2も対象に加えた町の「総合事業」の一環。同町では、ほかにも運動や趣味の教室、町内会ごとの通いの場など多彩な受け皿が整っており、多くの住民ボランティアが運営に協力している。

■独自の改善
 同センターが発足した06年度当時から、同町は高水準の保険料や認定率が課題だった。当初、国のメニューを基に介護予防を進めたが成果は上がらなかった。このため、県外の先進事例を参考に10年度から「介護給付の適正利用」「介護予防の推進」を柱に独自の改善に着手した。
 給付の適正利用に向けては新たに、職員が介護保険の認定申請時に本人の身体機能や生活状況の詳細な聞き取り調査を行うことにした。介護保険サービスに限定せず、本人の状態や希望に応じた支援につなぐのが狙い。従来は積極的に認定を進めていたが、認定者のうち2割がサービスを利用していなかったという。
 申請に手間がかかるようになり、当初は「介護保険サービスの利用を阻んでいる」と受け取られて本人や家族、介護事業者などの反発もあった。だが、必要性について啓発を進めて軌道に乗せた。同センターの江田佳子保健師(課長補佐)は「それまでは介護保険を適正に利用してもらうことに意識が向いていた。しかし、高齢者が健康に生活できる期間を延ばす方が大切ではないかと考えた」と振り返る。

■住民が協力
 介護予防の促進には地域、住民が協力。11年から32町内会それぞれと、年1回「高齢者見守りネットワーク情報交換会」を開催。13年から各町内会を職員5人で分担し、情報把握や連携を強化。住民が高齢者に声を掛けたり、職員が高齢者を訪問したりして、早期に介護予防や自立支援のメニューを利用してもらう環境をつくった。
 江田保健師は「全国一律の介護保険サービスより、地域ぐるみの高齢者支援の方が参加しやすく、介護予防の効果も上がった。住民同士のつながりや高齢者を見守る土壌が残っていたことも大きく、取り組み自体が地域コミュニティーの維持にも役立っている」とする。
 介護保険料は3年ごとに改定される。同町は12~14年度に65歳以上が支払う基準額が、県内最高の月5990円(前期比12・5%増)だった。15~17年度は6070円(同1・3%増)とほぼ横ばい。18~20年度は減少に転じた。10年度に20%を超えていた要介護認定率は17年末、県内最低の13・6%。13年度に年10億円超だった介護保険の給付費も16年度、約9億4千万円にとどまった。
 同町の取り組みは、厚生労働省が介護予防や高齢者支援の先進事例の一つとして紹介している。県地域包括ケアシステム推進協議会構築部会長で長崎大保健学実践教育研究センターの井口茂教授は同町について「住民や関係者が介護予防の必要性を共有している。成果を挙げている自治体は地域の課題を正確に把握して独自の対策に取り組んでおり、他でも現状に即した取り組みが求められる」としている。

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